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新人教育に生かしたい「ピグマリオン効果」とは?~期待されると人は伸びる!?~

コラム
 ~古代ギリシャの王・ピグマリオンは女性の彫像に恋をしてしまいました。像に恋焦がれるあまり、衰弱していくピグマリオンに同情した神は、ついに彼の願いに応え、像に命を吹き込みます。像は王の期待通りついに人間の女性へと変貌を遂げたのでした~

この神話に因んで名づけられたのが、「ピグマリオン効果」。他者からの期待に応えようとする人間の心理を指すもので、これまで主に児童教育に用いられてきました。最近では企業の人材教育においても注目を集めるようになっています。彫像を人間に変えたピグマリオンのように、期待通りに部下を動かすにはどんな配慮が必要なのでしょうか?

■ローゼンタール博士の実験

 ピグマリオン効果を最初に提唱したのは、ハーバード大学のローゼンタール博士でした。博士はある小学校で知能テストを行ない、学級担任には、「このテストの結果で、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子供とそうでない子供がわかる」と説明。実際にはこのテストにそんな機能はないにもかかわらず、担任にそう信じ込ませました。
 さらにテスト後、結果とは全く関係なく、ランダムに数名の子供を選んで名簿を作成、「これが今後成績を伸ばせる子供達だ」と担任に教えたのです。何も知らない担任は、その子供たちの成績が伸びることを期待しつつ指導を続けました。すると不思議なことに、その子供たちの成績は向上したのです。ローゼンタールは、成績向上の要因として「担任が子供達に対し、期待していると意思表示したこと」、「子供達も自分が期待されていると感じとったこと」を挙げています。

■企業の人材教育への応用~ピグマリオン・マネジメント

 ローゼンタールの実験結果を受けて、同じハーバード大学のリビングストン博士は「ピグマリオン効果は企業の人材マネジメントにも役立つ」とし、「ピグマリオン・マネジメント」を提唱しました。ケーススタディに基づく彼の主張は、以下の通りです。
①マネージャーが部下に何を期待し、どう扱うかによって、部下の業績と将来の昇進はほとんど決まってしまう。
②優れたマネージャーは、「業績をあげ、目標を達成できる」という期待感を部下に抱かせる能力をもつ。
③無能なマネージャーは部下に②のような期待感を与えることができず、部下の生産性も上昇しない。
④部下は自分に期待されていることしかやろうとしない傾向が強い。

 リビングストンは、ピグマリオン・マネジメントはベテラン社員よりも若手社員に有効であるとしています。若手社員は、上司の期待へ必死に答えようとする傾向が高く、これを利用すれば彼らを効率的に教育できるという、まさに「鉄は熱いうちに打て」の方式です。

■新入社員にこそ優秀なマネージャーをつけよ

 しかし一般的に日本企業では新入社員がベテランのミドル・マネージャーや経営幹部のそばで働ける機会はあまりありません。OJTでも指導側には経験の浅い若手社員やいわゆるライン・マネージャを当てることが多いのではないでしょうか。
 リビングストンは、これは新入社員にとって「第1歩から最悪の状況下で働くこと」に等しいとし、そういう新入社員は、自分の能力を伸ばしてもらえないことに失望、仕事や昇進への積極性を徐々に失っていくと指摘。そして新入社員を最初に配属させる上司には社内有数の優秀なマネージャーを推奨しています。ちょうど子供たちが「先生のようになりたい、先生にほめられたい」という気持ちで勉強や運動をがんばるように、新入社員に「あの人のようになりたい、あの人に認められたい」と思わせるような優れた上司こそ、大きなピグマリオン効果を及ぼすからです。

 若手社員の早期離職に悩む企業が増えていますが、彼らを「期待はずれだった」と嘆く前に、その「期待」を彼らにうまく伝えられていたか?そもそも期待していたこと自体を彼らに認識させたのか?を自問する必要があります。もしもこの自問の答えがNOだったなら、ピグマリオン・マネジメントを検討してみる価値は十分あると言えるでしょう。