IQ(知能指数)に対して「こころの知能指数」と呼ばれるEQ(Emotional Intelligence Quotient)は、1990年に米国の心理学者ピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士によって提唱されました。
両博士の研究テーマとは「ビジネスで成功する人に必要な能力はどこにあるのか?」ということでした。
多数のビジネスパーソンの調査によって、ビジネスの成功者は、単にIQが高いわけでなく、総じて「対人関係能力」が優れていることが証明されました。
これらの成果をもとに心理学的見地からまとめられたのが、EQ理論です。
世界的には『EQこころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著、邦訳は講談社刊)がベストセラーになり、世界トップ企業といわれる「フォーチュン500社」のうち、8割の企業が教育などの研修等によって自社になんらかの形でEQを導入しています。
日本でも企業や研修だけでなく、教育現場における人材育成などにおいて各自治体などでも広く取り入れられるようになってきています。
EQとは、感情を上手に管理し利用することで、「前向き」な感情を生み出すことを主眼としています。
「明るい」「喜び」「楽しい」「意欲的な」「安らぎ」「やる気」といった積極的な感情です。
こうした感情は前向きな思考につながり、前向きな行動を生み、成果に結びつけることができるのです。
前向きな感情は大きな「資産」でもあるのです。
みなさんの企業や職場にいる、上司や同僚、部下たちから仕事ができると一目置かれ、人格的にも尊敬されているような人材。そういった人材が持っている能力はどのようなものでしょうか。
ビジネスに必要な能力には、IQやスキル、業務知識や経験など、いろいろなものが考えられますが、優れた人材はこれらの能力に加えて、仕事に対する高いモチベーションや、相手の気持ちを理解し、行動できる能力を持っています。
こうした「人間的魅力」を支えているのがEQなのです。
パソコンにたとえると、EQは基本システムであるOS(オペレーション・システム)といえます。
その土台がうまく機能してから、はじめてIQやスキル、業務知識などのアプリケーション・ソフトが最大限に発揮されるようになるのです。
一般的に、学歴があり、IQが高く、物事を正確に処理できれば、仕事ができる人とも思われがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。いくらIQが高くても、すぐに怒ったり、動揺したり、人の気持ちを察知できない人は、人間関係を発展させていくことができず、必然的に仕事の成果を上げることも難しくなるものです。
人間は、ショックな出来事が起こったり、極度の緊張状態が続いたりすると、集中力や判断力、論理性、記憶力等の能力が低下して、本来の能力を発揮できなくなるものですが、このいざという時に能力が発揮できる人は、 EQが高い人ということになります。
人材採用時に、このEQをベースにした適性検査を実施して判断していくこともできますが、EQは、先天的な性格だから変わらないというものではなく、トレーニングすることで鍛えていけるものなので、社員研修に組み込んで、一人ひとりの能力を伸ばしていくことも可能です。
EQを細分化すると、
「感情の識別」
「感情の利用」
「感情の理解」
「感情の調整」
という4つのブランチ(構成能力)で形成されています。
| ブランチ | 定義 |
|---|---|
| (1)感情の識別 | 自分自身や周囲の人たちが、どのように感じているかを識別する能力です。ある人の顔の表情から、その人がどのように感じているかを読み取ったり、会議等の人が集まっている場の雰囲気や状況を的確に掴んだりする能力を指します。 |
| (2)感情の利用 | 状況の判断や課題達成のために、自分の感情を役立てる能力です。問題を効果的に解決したり、創造性を発揮したりするためには、どの様な感情を作り出せばよいのかを知っていて、実際にその感情を自分の中に作り出すことができる能力を指します。 |
| (3)感情の理解 | 感情がどのような原因から起こるのかを理解し、一定の感情と状況を結びつけることができる能力です。また、ある状況下では、対立、矛盾する複雑な感情を感じることがあるということを知っていたり、感情は一つの感情から別の感情へ推移するということを理解したりする能力も含みます。 |
| (4)感情の調整 | 感情的になった場面で、その状況を改善するために取り得る最善の行動は何かを理解し、その行動を取ることができる能力です。対人関係の維持・発展や、対人問題の解決のために、自分の感情を適切な状態に調整しながら、最も効果的な行動を取るという能力を指します。 |




